健康について不安を感じる、痩せようと思ったとき、体を強く・大きくしたいと考えるとき栄養についての考えることが多いのではないでしょうか。
運動の指導をさせていただいていると栄養について改めて見直してみたい、知りたいというお声をよくお聴きします。
栄養とは、人が生きる上で健康を維持し、生活をする上で必要不可欠なものです。運動やスポーツ競技をしている方には特に意識したいものの一つです。
体調管理のために栄養バランスを整え、脂質は抑えながらビタミン・ミネラル不足を補う。
体重をコントロールするため脂質は控えながら、栄養バランスを意識する。
など・・・
食事は、食べたいときに食べたいものを食べる。美味しいものを食べる。好きなものを食べる。満足できるだけ食べる。といった楽しみや欲を満たすことが多いです。
今回は、栄養について意識した理由や目的・目標を明確にして、必要な知識を用い食事について考えていただけるポイントをご紹介します。
栄養学
栄養学とは、食事や食品、その成分である栄養素がどのように生物の中で利用され、影響しているかを研究する栄養に関する学問である(Wikipediaより引用)
栄養学とは、栄養と健康との関わりや調理・加工方法などについて研究する学問。食を通じて人々の健康維持や医療分野に役立てることを主な目的としている(マイナビ進学より引用)
当方は栄養学とは「食事の必要性について理解し適切な栄養の摂取による健康の保持・増進を身につける学び」と考えています。
スポーツ栄養学
運動をする一般人あるいはスポーツ選手(アスリート)が健康を維持し、パフォーマンスを十分発揮するためのコンディションを整えるために役立つ栄養素や栄養の取り方について学び、故障や怪我の予防や回復(リカバリー)に役立つ栄養面からの化学的な知識を学ぶもの(スポーツ・健康栄養学より引用)
これさえ食べれば良いという食べ物や栄養素はありません。健康管理のための食事も同じです。
一つの栄養素だけで健康が維持できることはなく、一人一人の目的に適した栄養摂取量や栄養素を摂ることが必要不可欠です。
食事・食物は、健康に良いも悪いも「量」次第であり、「体に良い〇〇」という情報に対しても「量」の視点が必要です。
例えばサプリメントなど単独の成分を摂り過ぎると「体に悪い」影響を及ぼす場合も十分にあります。
「体に良い」=「いくら摂っても体に良い/大丈夫」ではなく、「どんな物質も『安全』ではない。
『安全な物質』はなく『安全な量』があるだけ」と食品安全委員会(内閣府)にも示される通り、食品は体への影響がはっきりしていないもののカタマリでもあり、そのリスクを分散させるためには「さまざまなものをバランスよく食べること」という結論に落ちつくと示されています(東京大学 五十嵐博士、Newton別冊『食と栄養の大百科』真偽や信頼度の判断基準より参考・引用)
当方はスポーツ栄養学とは「一人ひとりの目的に応じて身体活動の増加に伴うエネルギーや栄養素の摂取に対応した栄養管理(栄養状態を良好に維持する)の学び」と考えています。
・パフォーマンスアップに必要な要素の一つである
・消費されたエネルギーや栄養素の補給が必要となる
・パワー/持久力の向上等トレーニング効果を高めるための身体つくり(基礎体力)として必要である
・コンディションを整えるためのリカバリーとして用いることができる
パフォーマンス向上を目的とした継続時間、強度等を考慮したエネルギー摂取、栄養素や水分の摂取を効果的に実施するため、エビデンスを用いてスポーツ競技、種目、個人の特性に応じてスポーツ栄養士や管理栄養士など指導者がプログラムを作成しています。
身体活動の増加に伴うエネルギーや栄養素の摂取に対応した栄養管理(栄養状態を良好に維持する)を行うために以下の要点に注意していきます。
①身体活動量に伴うエネルギーや栄養素の必要量をコントロールする
・活動量の増加→エネルギー摂取量の増加
・ただし、食べることのできる摂取量には限界値があります(1回食における消化吸収量の限界も同様)
②身体活動(骨格筋の運動)によって自律神経の交感神経が優位となり、身体活動中は効率よく消化吸収することができないことがある
③1日のうちで自律神経の副交感神経が優位となり、効率よく消化吸収することができる時間は、身体活動の時間が長いほど短くなる
①摂取する栄養素の優先順位を考える
・糖質とタンパク質のエネルギー必要量たけでなく、ビタミンとミネラルの必要量もバランスよく摂取するように食材の選択や調理方法、補食、補助食品(サプリメント)を用いた食事スケジュールが大切になります
・成長期のアスリートなどにはサプリメントを利用せず、バランスよく食べることのできる摂取必要量までの身体活動量までにトレーニングや練習をプログラム作成することも大切です。
②相対的エネルギー不足の状態に注意する
エネルギー摂取量が不足した場合は相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sports:RED-S)の状態になります。消化吸収の効率を良くする栄養管理は練習に合わせた食事の量やタイミング、補食の活用などを用いて対応します。
栄養管理を考える上での食事の基本はバランスの良い食事です。
バランスの良い食事は、⑴食事内容が整っていること ⑵自分にあった必要量を摂ることの2点を成立させることです。
食事の内容が整っていても必要量より少ない場合は低栄養状態となります。
反対に必要量より多い場合は過剰栄養状態となります。
エネルギーだけでなく栄養素を過不足なく食事から摂るために基本的な知識を身につけることも大切です。
①食事構成を考える
・主食、主菜、副菜、果物、乳製品の構成で食事考えます
②目的に応じて食材と選択する
・コンディション維持、免疫力強化、リカバリー、持久力強化、筋肉量を増やす、体脂肪量を減らすなどです
③調理方法を考える
・目的に応じた調理方法や季節や現場など環境条件に合わせた食べやすい方法を考えます
目的に応じた必要量が摂れているかの評価方法は、結果からでしか判断できないため、体組成測定(体重、体脂肪率など)やコンディションのチェックなどを定期的に記録して振り返ることが大切です
また、エネルギー摂取量が不足しているのかの評価基準方法の一つとして利用可能エネルギー(Energy Availability : EA)を算出する方法もあります
必要量の算出方法の例
a.推定エネルギー量JISS式(アスリート向け)
①除脂肪体重を求める(「体重kg」ー「体脂肪量kg」)
体脂肪率から体脂肪量を求める…A
体重kgー体重kg×体脂肪率%=除脂肪体重kg
②身体活動レベルをあてはめる
③推定エネルギー必要量を求める
28.5kcal×除脂肪体重A×身体活動レベルB=推定エネルギー必要量
b.推定エネルギー量 (一般向け)
「推定エネルギー必要量(kcal/日)=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル」
身体活動レベルとは、日常生活における活動の強度を数値化したものです。
生活の仕方や仕事の内容によって、「低い(I)」「普通(II)」「高い(III)」に分類されます。
具体的な数値や日常生活の内容は下記のとおりです。
※カッコ内の数値は、おおよその範囲を表します。
・低い(I):1.50(1.40~1.60)
生活のほとんどを座って過ごしている。活動はするが、静的な活動が中心
・普通(II):1.75(1.60~1.90)
デスクワークなど座り仕事が中心だが、職場内で立って移動したり、時に立ったままの作業や接客をしたりすることを含む。あるいは、通勤、買い物、家事、軽いスポーツなどで体を動かしている
・高い(III):2.00(1.90~2.20)
移動したり、立って仕事をしたりすることが多い。あるいは、余暇にスポーツをして過ごすなど、活発な運動習慣を持っている
通常は、ほとんどの人が「低い(I)」か「普通(II)」にあてはまります。
なお、推定エネルギー必要量は、活動量の少ない成人女性の場合は1,400~2,000kcal/日、男性は2,000~2,400kcal/日程度が目安です。
参照:日本医師会(https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html)
次回 後編に続く
・Wikipedia 「栄養学」
・化学同人 編者:坂本美子 はじめて学ぶ健康・スポーツ科学シリーズ6巻「スポーツ・健康栄養学」
・ナツメ社 著者:清野準・塚本咲翔 「パフォーマンスを高めるためのアスリートの栄養学」
・Newton別冊『食と栄養の大百科』
・J S P O日本スポーツ協会「女性スポーツ促進に向けたスポーツ指導ハンドブック」
・J S P O日本スポーツ協会「アスリートの栄養・食事」
・日本医師会 「1日に必要なカロリー 推定エネルギー必要量」
・Athlete Body 『The Muscle and Strength Pyramid: Nutrition』