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未分類 2024.08.27

#032 女性アスリートの三主徴

女性アスリートの三主徴とは

月経周期や女性ホルモンに関してはわかっていないことが多いのが現状です。

個人差も大きいことが知られています。

自分の月経についてよく知らない、周囲に相談しずらい、職場やスポーツ現場、部活動、スポーツジムなどでの周囲からの認識不足だけでなく、食生活や体調管理などに対して適切なアドバイスができるように基礎知識を知るべきと当方は考えています。

それは、女性への配慮だけでなく、パートナーへの気遣い、働きやすい環境づくり、運動現場での理解、自分自身が予防や体調不良への認識を持つことにもつながります。

女性の体調管理の注意点として「女性アスリートの三主徴」があります。

女性のスポーツ実施者(特に若い世代のアスリート)や指導者で知らない方が半数以上いることが報告されています。

肉体労働やスポーツを生活に取り入れている方、体力低下を感じている方、ダイエットを目的に運動・トレーニングを実施されている方など、エネルギー不足によって起こる症状が確認されています。

女性アスリートだけでなく、指導者や運動を実施するすべての女性は皆知っておくべき体調管理の注意点といえます。

特にアスリートによるエネルギー不足が問題視されており、国際オリンピック委員会(IOC)は相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sports:RED-S)によって引き起こされる健康問題を示しました。

相対的なエネルギー不足はさまざまな組織や機能に悪い影響を与えます。中でも女性においては、「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad : FAT)」が起たことを報告されています。

アメリカスポーツ医学会では、女性競技者に多い健康問題として、利用可能エネルギー不足(low energy availability: LEA)、無月経、骨粗鬆症を挙げ、これらを「女性アスリートの三主徴(Female Athlete triad: FAT)」と定義していました。

FATは、1993年にアメリカスポーツ医学会により「摂食障害」・「無月経」・「骨粗鬆症」の三主徴として定義されましたが、2007年に適切なエナジー・アベイラビリティーが確保されれば正常な月経、骨の健康も維持されるという考え方から「摂食障害の有無に関わらない低エナジー・アベイラビリティー」、「機能性視床下部性無月経」、「骨粗鬆症」の3つに変更されました。

つまり、利用可能エネルギーの低い状態が長期的に続くことによる消費と摂取のエネルギー均衡の崩れが、健康障害(疲労骨折、貧血、無月経など)を起こす可能性が高まることが指摘されています。

特徴としてサッカー、バスケットボール、バレーボール、自転車、ボート、マラソン、競泳、体操、フィギュアスケートなどのスポーツにおいて、高強度で長時間の練習やトレーニング、極端な減量による栄養補給不分が、パフォーマンスの低下と深刻な健康トラブルを招くケースが多いと報告されています。

FATが認められた場合の疲労骨折のリスクが通常時の5倍以上高まることが報告されていることから、障害予防の観点からもFAT予防対策は重要となります。

*FATのうち1つの疾患を認める場合 2.4 から 4.9 倍、FAT 全てを認める場合 6.8 倍疲労骨折のリスクが高まる

LEA は、「(食事から摂るエネルギー摂取量)-(運動によるエネルギー消費量)」が 1日除脂肪量1kg あたり 30kcal/kg/ 日未満と定義されます。

LEA の状態が長期間続くと、排卵を促すための黄体化ホルモンの周期的分泌が抑制され無月経となります。このため、日常的に基礎体温を測定し、排卵があることを示す高温期がみられない競技者では、運動量と食事量の見直しを行うことが LEA の早期発見に繋がります。

しかし、実際にこのエネルギー摂取量や消費量を測定することは現実的ではないため、海外では下記の3点に当てはまる場合は LEA を疑うとされています。

①成人:BMI 17.5 以下

②思春期:標準体重の 85%以下

③一ヶ月以内の体重減少が10%以上

無月経の原因は様々ありますが、まずは医療機関を受診し、原因が LEA であるかを鑑別することが適切な治療につながります。

 LEA による無月経の治療は、運動によるエネルギー消費量を減らす、かつ(または)食事からのエネルギー摂取量を増やすことです。

エネルギーバランスの改善については、LEAの改善を行っても黄体化ホルモン値の改善や月経が再開しない場合、また低骨量/骨粗鬆症の競技者では、競技特性を考慮してエストロゲン製剤によるホルモン療法を行う場合があります。重要なことは、ホルモン療法施行中もLEAの改善は継続することです。

女性アスリートの三主徴の改善と予防

改善策を考える

FAT は、エネルギー摂取量を多くすることで改善されます。

※栄養管理する上での注意点 エネエルギー不足の考え方と評価を参照(前回コラムより)

例えば、体重50kg、 体脂肪率 18%、除脂肪体重 41kg、エネルギー摂取量が 1800kcal、運動によるエネルギー消費量600kcal の競技者の場合、EA は 29kcal です。

これはFAT を 起こしている状況にあると評価できます。この方の EA を 45kcal とする には、2400kcal 程度のエネルギー摂取量となります。

摂取するエネルギー量を600kcal 多くすることで解決すると考えることができますが、急にエネルギー摂取量を多くすることにより、1800kcalで適応して生きてきた身体は、600kcal を使い切れずにエネルギーが余った状態となり、体脂肪として貯蓄することになります。

そこで適応しているエネルギー量を徐々に多くしていくことをします。徐々にエネルギー摂取量を増加させることで、半年 から1年かけて適応を EA45kcal 程度に増やしていくとよいと考えられます。

ジュニアアスリートの場合には、エネルギー不足により成長に支障をきたしている可能性が高いため、成人アスリートよりも大胆にエネルギーの摂取量を多くしていくことが必要です。また、EAから評価するのではなく、成長曲線から成長の状況を把 握し、進めていくことが薦められています。

予防策を考える

FAT の予防は、エネルギー不足にならないことです。

定期的に EA を算出して評価することで確認することができます。また、コンディションが良好な状況を維持できていることも評価できます。

減量によって意図的にエネルギーの摂取量を減少させた場合においてもエネルギー不足となることから、エネルギー減少量の設定を多くし過ぎないことや、長期間に及ばないようにすることなどに注意しなくてはなりません。

成長期は、身長が高くなることにより、体重も増加することから、除脂肪体重量もそれに伴い増加している状況であると言えます。

そのため、成長期のEAは、エネルギー摂取量が同じ場合には、低下していくことになることを知り、エネルギー不足にならないように食べること、食べる量が上限に達した場合には、運動量を少なくして対応します。

エネルギー不足予防対策として日本陸上競技連盟(JAAF)が「女性アスリートのエネルギー不足を考える」をテーマに日本陸連栄養セミナー2018を開催し、日本陸連医事委員会としてエネルギー不足から引き起こされるコンディション不良を予防するためアスリートの健康を支えることを目的とした「アスリートのエネルギー不足予防10か条」をご紹介いたします。

*日本陸上競技連盟(JAAF)公式サイト「アスリートのエネルギー不足予防10か条」2018.9より引用

参考/引用

・ナツメ社 著者:清野準・塚本咲翔 「パフォーマンスを高めるためのアスリートの栄養学」

・J S P O日本スポーツ協会「女性スポーツ促進に向けたスポーツ指導ハンドブック」

・J S P O日本スポーツ協会「アスリートの栄養・食事」

日本陸上競技連盟(JAAF)公式サイト「アスリートのエネルギー不足予防10か条」2018.9

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