老い(老化現象)とは、加齢にともなる全身の能力の低下のことと前回のコラムでご紹介しました。
具体的にはどのような能力低下が見られるのでしょうか?
加齢により個人差はありますが「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚(皮膚感覚)」「味覚」の五感の機能が低下していきます。
五間からは多くの情報を得ることができます。
日常生活に必要不可欠である食事、天候状態の把握、交通状況、運転操作、運動、読書、コンサートや旅行など人生を豊かにする楽しみなどにも影響を与えています。

老眼として加齢による機能低下の症状が最も早く現れはじめます。
視覚の衰えを40代後半から感じ始める方が多いと言われています。
「近くのものが見えにくい」「目が霞む」などの老眼の症状から始まり、50代を過ぎると動体視力の低下白内障のリスクが高まります。
老眼は毛様体の衰えや水晶体の効果によって、水晶体を凸状に膨らませて近いに焦点を合わせることが困難になることで生じます。
眼球を動かす筋肉が衰えることで動体視力も低下します。水晶体の色が白く濁って見えるような視力低下が生じた状態を白内障と呼びます。
スポーツにおいて、野球、バスケットボール、サッカー、卓球、モータースポーツなど動体視力の高い能力が必要な場合、目のトレーニングが必要とされていることも近年では知られています。
耳に入った音は外耳道を通じて鼓膜に伝わり、耳小骨と呼ばれる三つの骨まで達します。
ここで増幅された音波はさらに奥に伝わり蝸牛(かぎゅう)の中にあるリンパ液を振動させます。
この振動を蝸牛の中の「有毛細胞」という細胞がとらえます。
50代前半までは少しずつ低下していきますが、60代を過ぎると急激に衰えると言われています。
老人性難聴は、有毛細胞の数や感覚毛の数が減少することでおきます。80歳以上では男性の80%以上、女性の70%以上に難聴が認められるようになります。
嗅覚機能の低下は粘膜の奥にある嗅細胞と呼ばれるニオイを感じる細胞の数が減ることが原因です。
60代以降で顕著に機能低下していると言われています。
風邪をひきたことが引き金となり、ニオイがわからなくなる、アルツハイマー病やパーキンソン病の初期症状として現れる、薬の影響によるものなどが知られています。
しかし、原因不明の嗅覚異常も少なくありません。近年では新型コロナウイルス感染症の後遺症として発症することが多いことが報告されていました。
皮膚感覚の低下は65歳以降で顕著にみられます。
熱い、冷たいなどの感覚が鈍くなるため冬場には電気毛布やカイロでの低音火傷になりやすいことが知られています。
また、暑い夏には暑さを感じにくくなっているためエアコンを使わない、気温に適していない必要以上に服を着ていることや、介護老人施設などでよく目にする姿として、暑い夏場でも長袖の服を着て過ごされていたり、発汗機能の低下も合わさり熱中症が発症しやすくなる事態が起きていると予想できます。
舌の表面にある味蕾の中にある味細胞が味覚を感じています。
味蕾の数は加齢による減少があまりみられないことが報告されています。他の感覚と比較すると衰えにくいといわれています。高齢者になると塩味、苦味、旨味を感じにくくなることが少数で報告されています。
それ以上に、加齢とともに(高齢者では)歯の欠損、唾液の分泌量の減少、亜鉛の不足、服薬によるに副次的な味覚異常が起こる例が方向されています。
老化による味覚の衰えるスピードは早くないと考えることができると、副次的な味覚異常が起きないように疾患などによる健康異常が起きないように個人に適した運動、睡眠、栄養のバランスを意識することで70歳を超えても食事を楽しむことができ、健康寿命を高めたいというモチベーションやきっかけになるのではないはないでしょうか。
また、加齢による感覚器の機能低下を完全に防ぐことはできません。周囲の協力から適切な対策をとることが重要だと考えられます。
感覚機能の低下からスムーズなコミュニケーションをとることができないことにストレスを感じ、コミニュティーや会話の機会を減らしてしまうリスクを回避するためにも、メガネや補聴器、スピーカーなどの医療機器を上手に活用して、会話や映画鑑賞、音楽鑑賞など楽しみの長く続くライフスタイルをサポートし、互いに配慮して想像することからジェスチャーや表情からも伝えたいことを伝えられるように想像力を用いて行動することも大切だと考えます。

・Newton別冊 「70歳の取り扱い説明書」
・内閣府 「令和7年版高齢社会白書」
・内閣府 「令和7年版高齢社会白書」