日本の平均寿命が男女ともに80歳を超えている現代社会で長い生涯を健康に過ごすために必要な効果的な予防対策を考えるため、性別や年代ごとに関わる病気のかかりやすさを知る事も大切です。
厚生労働省の患者調査(2017年版)によると、女性の入院患者数と外来患者数は男性よりも22%多い割合を示しているが、病気の内訳では男性が女性を上まっている病気も多い。その代表例はガンである。
国立がん研究センターの報告にもあるようにがんの予防には、禁酒、節酒、バランスの良い食事、適度の運動、適正体重の維持、感染予防が効果的とされていますが生活習慣を見直すため性別や年齢に応じた食事習慣について考えることが大切と考えまとめてみます。
「10代〜20代の頃はあまり気にせずに食べても太りにくかった」
「学生の頃は残さず食べるように注意されていた」
「20〜30代は毎日のように飲みに行っても体格は大きく変化しなかった」など
過去の経験から食事習慣を変えられない方が非常に多いと感じています
改めて、年齢に応じた食事習慣の見直しがなぜ必要なのか?その理由を考えてみたいと思います。
あなたの現状に適した(身体の状態、生活習慣など)食事習慣へ変えないことで、肥満に繋がる可能性が高いことが考えられます。
食べ物を消化する能力や代謝能力は、生まれてから成人に成長するまでの間に発達し、やがて老化していきます。
また、性別の特徴として、女性は妊娠している時と妊娠前とは必要なエネルギー量や栄養素が大きく変わります。
以上をもって年齢・性別の特徴に応じた食事習慣の変化が必要となることがわかります。
正しい食事習慣を身につける時期
栄養の過不足が病気を招く
⑴ 乳幼児期(0〜6歳)
発育のために多くのエネルギーと栄養素が必要な時期です。
消化機能が未成熟です。成長につれて、普通食へ食事スタイルが変わります。
食物アレルギーを発症しやすい時期でもあり、成人と比べると免疫力が弱いため調理衛生管理には注意が必要です。
⑵ 学童・思春期(6〜18歳)
身体が大きく発達するため成人に比べて多くのエネルギーと栄養素が必要です。
この時期に確立された食事習慣は今後改善することが難しくなる傾向があり、生活習慣病予防のために、健康によい食習慣を意識することが重要です
朝食の欠食、間食や夜食の摂りすぎ、スナック菓子やインスタント食品の摂りすぎ、野菜不足カルシウム不足は避けるように心掛けます。
特に女性は月経が始まるため鉄分不足に注意が必要です
栄養バランスを整える時期
10代の頃(成長期)の体力や運動量に対して摂取エネルギーが過剰になりやすいため、肥満(BMI25以上)になりやすく生活習慣病のリスクが高なりやすいため注意が必要です。
生活環境の変化から栄養バランスの偏った食事習慣となりやすく、近年ではダイエットによる低体重が問題となることも懸念されています。
特に女性の「やせ(BMI18.5未満)」体格や栄養不足が増えており、日本では21.7%の女性(20〜59歳)にみられる報告があります。(2017年度国民健康栄養調査)
発展途上国の食糧不足が原因であることが多い中、先進国では無理なダイエットが原因となることが多いと報告されています。また、特定の栄養素が不足することで病気になるリスクも高まります。
食欲を維持する時期
核家族化の進行により一人暮らし、仕事以外の人間関係やコミュニティが少なくなり、家に閉じこもりがちとなることや、生活活動量の減少や精神的なストレス、薬の副作用など様々な理由で食欲不振が大きくなりやすく栄養不足になりやすいため注意が必要です。
歯の衰えや口腔内の炎症なども原因となるので定期的な医療機関の受診も必要です。
咀嚼や嚥下能力が低下することで嚥下障害が起こりやすく誤嚥性肺炎の原因になります。
流動性やゼリー食、とろみをつけた食事調理法など工夫が必要となることが多くなるが、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが不足しやすいため、早期から咀嚼や嚥下能力の訓練や口腔内の健康状態を整えることを意識することが必要です。
高齢期の栄養状態
低栄養とその予備軍20%、健常な栄養(適切な摂取)60%、過剰栄養とその予備軍20%と報告されています
胎児を育てるために母体は多くのエネルギーと栄養素を必要とします。
エネルギー過剰摂取による肥満にも注意が必要で、妊娠中は特に鉄分、カルシウムが不足しやすく、エネルギーの過不足は母体と胎児の健康に影響します。
母体の低体重による胎児の飢餓状態(出生体重が2500g未満の低体重)は、出産後の死亡率や病気の発症リスクが高まることや、成人後に生活習慣病になるリスクが高いことが報告されています。
また、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など発症しやすいため、母体と胎児にリスクが高まります
妊娠すると胎盤から出るホルモンや酵素の働きでインスリンが効きにくくなるため、血糖値が高くなりやすくなります。
妊娠糖尿病になると早産や流産のリスクが高まり、新生児の死亡や先天奇形などの可能性も高まります。
妊娠中には積極的なインスリン投与と厳しい食事療法が行われます。
肥満、家族に糖尿病の人がいるなど35歳以上の高齢妊娠などの場合に発症リスクが高まります。
妊娠20周以降に高血圧やたんぱく尿の症状が出たり、元々あった高血圧やたんぱく尿の症状が悪化したりする病気です。
原因はまだよくわかっていませんが、新婦の約20人に1人の割合で発症します。重症になると母体が痙攣発作や脳出血を起こしたり、肝臓や腎臓の機能障害を起こしたりすることがあります。
また胎児の発育へ悪影響を与え、胎盤が子宮の壁から剥がれたりするなど、胎児の命に関わる危険もあります。
この病気は重度の場合は入院して痙攣を予防、血圧を下げる薬を投与します。軽度の場合は、食事療法を行います。この場合は、低エネルギーで高たんぱく質、塩分は少なく、動物性脂肪を減らした食事を摂るようにします。
・Newton別冊『からだの検査数値』
・Newton別冊『食と栄養の大百科』