前回のコラム『秋から冬の体調管理①』では、コンディションと感染症について、免疫機能を維持する、高めることをポイントに紹介しました。
今回は、秋から冬は生活習慣が乱れやすい季節であり、「食生活の乱れ」に注目して運動/トレーニングを実施するために注意したい食事/栄養について紹介していきます。
特にこの季節は、ランニング、サッカーなどの屋外持久系スポーツが実施しやすい点を考え、持久系スポーツについて考えてみます。
コンディション維持の体調管理のために、自分の現状や生活パターン、コンディション、目的、目標に合わせた栄養管理を行うことが重要です。
運動だけでなく仕事などの活動量に見合った適切なエネルギー量と栄養素の摂取量を考え、栄養素の過不足がないように食事バランスを整えることを意識していきます。
スケジュールやトレーニングの期分け(準備、レース、移行/切替など)に合わせた栄養摂取の量やタイミングを計画する必要があります。栄養素の摂取のポイント期分けごとに異なります。
1.準備期
特に準備期では、疲労回復や体調維持、レースに向けた調整など、持久力の強化、スピードの強化、筋力の強化など、さまざまな課題が生じてくる時期です。
個人の状態に合った食事管理がポイントとなります。
そのため移行期の強化トレーニングの影響で疾患やスポーツ外傷・障害が発生しやすく、免疫機能を考慮した栄養摂取が必要です。
試合期に向けて体重のコントロール(体脂肪の減少)も考慮する必要がある場合があります。
2.試合期
栄養管理の目的は、シーズンを通して高いパフォーマンスを発揮し続けることです。
そのために、試合前後に適した栄養摂取を心がけることがポイントです。
試合前には高炭水化物の食事でエネルギーをしっかり補給するとともに、脱水や熱中症予防のための水分摂取やミネラルも確保します(特に夏場など)。
試合後は疲労回復のケアとリカバリーができるように、できるだけ早いタイミングで炭水化物とたんぱく質を補給します。
3.移行期
移行期は鍛錬期とも呼ばれる時期です。
インターバルトレーニングなどの持久系の高強度トレーニングを用いて心肺機能の強化を図ることもあります。
低酸素に適応する造血作用を利用した高地トレーニングや低酸素施設でのトレーニングを実施するなど、トレーニングの質や量ともに増加する時期はそれに見合った適切な栄養摂取が必要です。
下記の図よりポイントを簡単にまとめます。参照ください。
運動中の筋の主なエネルギー源は、グリコーゲンとして筋に蓄えられている炭水化物(筋グリコーゲン)です。
筋グリコーゲンが枯渇すると運動は継続できません。
しかし、体内に貯蔵できる炭水化物の量には限りがあります。そのため食事からの炭水化物の摂取量が不足したり、激しい運動によって急激に炭水化物を消費すると、低血糖状態となり持久的なパフォーマンスの低下、頭痛、めまいを生じる危険性があります。
炭水化物の枯渇が起きないように、レース前後は適切な高炭水化物食(炭水化物エネルギー比率 70%以上)の摂取が望ましいとされています。
高強度トレーニングの導入初期では、炭水化物の筋の消費量が増加することで疲労からの回復が遅延します。
しかし激しいトレーニングでは脱水症状や疲労から食欲が減退し、十分な食事量が摂れないことも少なくありません。
消化吸収のよいメニューを工夫したり、スポーツ用食品や果物などを活用することが薦められます。
持久能力の向上のためにはたんぱく質と鉄などの造血作用に必要な栄養状態が良好であることが必要です。
特に激しいトレーニングを行うと消化管での鉄吸収が阻害されます。
そのため、強化トレーニングを始めてから鉄の摂取を増加させるのではなく、あらかじめ良好な栄養状態でトレーニングに臨む必要があります。
適切なエネルギーやたんぱく質の摂取、造血に必要な鉄、葉酸などのミネラルやビタミンをバランスよく摂取できるように食事内容を整えることを意識します。
また、主食献立例をご紹介いたします。
よろしければ参考にしてみてください。
・独立行政法人 日本スポーツ振興センター/ハイパフォーマンスセンター「アスリートのためのトータルコンディショニングハンドブック
・ナツメ社「パフォーマンスを高めるためのアスリートの栄養学」