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未分類 2024.08.16

#031 スポーツと栄養(後編)

前回の続きスポーツと栄養(後編)をお伝えいたします。

栄養管理を考える上での食事の基本の補足

①5大栄養素を適切に偏りなく摂る

栄養素が相互に機能することでエネルギーを作り出し、筋肉の合成やリカバリー等が促進され身体構築(基礎体力)、パフォーマンス向上につながります。食物繊維は腸内環境を整える働きがあることからコンディション維持に役立つと考えられる

②意識的な水分補給

身体の約60%は水分であり、血液などの体液として存在する

血液循環を良好に保ち、栄養素の運搬機能を適切に行うために必要不可欠となる

リカバリーを早めるために身体ストレスを受けた際は当日中に身体水分量を適切な数値に戻すことが重要である

代謝や運動量によって、必要な水分量は変わります

健康な成人の場合 1日の水分必要量は体重1kgあたり約35ml1日に必要な水分量と言われています。

例えば体重が50kgの人は1.7L、60kgの人は2.1L、70kgの人は2.4L

これに運動量による脱水分をプラスアルファで水分摂取を意識します。

また、近年一般的な日本人における1日の水分必要量は体重あたり45~56mLの範囲考えられると発表されています(早稲田大学スポーツ科学学術院の渡邉大輝氏ら研究発表より)

意識的に水分摂取できる量から取り組んでいきましょう。

③栄養素密度を高める

栄養密度とは、100kcal中に含まれる栄養素量のことです。品数が増えれば1食あたりの栄養密度も高まります。

栄養密度を高めるために1日の食事回数、構成、品目を計画的に考えることをお勧めします。

目的に適切な栄養素量の割合をコントロールする(代表例:PFCバランス)など食事スケジュールを作成していくと良いでしょう。

栄養管理する上での注意点 エネエルギー不足の考え方と評価

エネルギー不足によって起こる症状はいつくも確認されています。

特にアスリートによるエネルギー不足が問題視されており、国際オリンピック委員会(IOC)は相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sports:RED-S)によって引き起こされる健康問題を示しました。

相対的なエネルギー不足はさまざまな組織や機能に悪い影響を与えます。中でも女性においては、「女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad : FAT)」が起こります。

そこでアメリカスポーツ医学会(ACSM)により利用可能エネルギー(Energy Availability : EA)を算出することでエネルギー不足を評価方法の一つがあります。男女問わずアスリートだけでなく、一般の方向けにも利用することができます。

利用可能エネルギー(Energy Availability : EA)

算出方法

摂取しているエネルギー量が運動で使用したエネルギー以外にどのくらいあるのかを除脂肪体重(体脂肪量と除いた量)あたりで評価します。

運動していないときにどのくらい組織や臓器でエネルギーを使用しているかを示した数値と言い換えることもできます。

評価は下記のようになります。

EAが45kcal以上はエネルギー不足ではない状態

EAが30kcal未満はエネルギー不足で危険な状態

EAが30〜45kcalはコンディション不良が起こる/起こりやすい状態

ただし、EAはエネルギー摂取量の数値や運動による消費エネルギー量の数値を栄養士やデバイスや計算ソフトなどによる算出が必要となり、簡易的で正確な数値算出となる可能性が難しいと言えますが、数値を評価するのではなく、どの状態であるかを把握するための評価法として日常的な状態がどのような状況にあるのかを客観的に評価するためのものとしてガイドライン作成などに利用することができます。

健康状態にマイナス影響を与えないためのガイドラインの一例

除脂肪体重あたり男性:25kcal/kg、女性:30kcal/kgを下回らないことが最低限必要なエネルギー摂取量の目安

*全ての人に一致するとは限らない

【マイナス症状の兆候】

・食べ物のことが頭から離れない

・病気になりやすい

・気分が晴れないことが多い

・パフォーマンスが向上しない

・性欲減退

・代謝機能や生殖機能に関わるホルモン分泌量が正常範囲にない

・無月経もしくは生理不順(女性)

まとめ

食事の必要性について理解し、適切な栄養の摂取による健康の保持・増進を身につけることで、一人ひとりの目的に応じたエネルギーや栄養素の摂取に適した栄養管理を意識して行動することが大切です。

食事記録と振り返りを繰り返すことで自分だけのオリジナルガイドラインを作成すること、一生大丈夫ではなくアップデートに心がけることが重要です。

短期間での食事量の過剰な増量・減量は、体調を崩すだけではなく摂食障害のリスクもあります。低脂質高たんぱく質など目的に応じた食事内容を工夫して長期間的に続けることが大切です。

それは栄養の摂取不足や効果が現れるには、長い時間が必要だからです。食事内容の調整は数日の単位で調整し、都度、体調や食欲に合わせて義務ではなく意識を変えることに取り組まれることをお勧めします。

参考/引用

・Wikipedia 「栄養学」

・化学同人 編者:坂本美子 はじめて学ぶ健康・スポーツ科学シリーズ6巻「スポーツ・健康栄養学」

・ナツメ社 著者:清野準・塚本咲翔 「パフォーマンスを高めるためのアスリートの栄養学」

・Newton別冊『食と栄養の大百科』

・J S P O日本スポーツ協会「女性スポーツ促進に向けたスポーツ指導ハンドブック」

・J S P O日本スポーツ協会「アスリートの栄養・食事」

日本医師会 「1日に必要なカロリー 推定エネルギー必要量」

・Athlete Body 『The Muscle and Strength Pyramid: Nutrition』

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