暑熱順化は、汗をたくさんかける(暑さに対応できる)身体に変化させ、身体は熱中症になりにくい状態となることから、熱中症発生のリスクを減らすことが期待できると考えています。
運動による熱中症事故は無知と無理によって健康な人に生じます。
今回のコラムは、『暑熱順化と暑熱対策④』の続き、暑熱対策⑤栄養ポイント、⑥睡眠テクニックを紹介していきます。
事前準備として熱中症への知識や暑熱順化の大切さを理解された上で、環境省や気象庁等が発表している予防案内指数を確認しながら対策を取っていきます。
酷暑による気温変化や天候変化による熱中症への備えにお役立ていただければ幸いです。
暑熱順化や暑熱対策のためには、身体のコンディションが良い状態を維持することが大前提となります。
食事のポイントとしては、エネルギーバランスの良い食事を摂ることが必要不可欠です。
エネルギーバランスの比率を炭水化物50〜60%、タンパク質15〜20%、脂質20〜30%が推奨されています。(農林水産省:「食事バランスガイド」)
また、水分、塩分、色味の濃い野菜や果物を積極的に取り入れることや冷やしたり、食べやすいサイズにカットすることもポイントです。
抗酸化物質
運動による活性酸素の増加は、体内を酸化させます。暑熱環境下(特に屋外)では筋肉温度の上昇により更に活性酸素が増加するため、抗酸化物質を摂取することで、体内の酸化を防ぎます。また、老化やさまざまな病気のリスクを低下させることも期待されます。抗酸化物質としてビタミンA、C、Eの摂取が大切です。
・ビタミンA 豚肉、鶏肉などのレバー、ウナギ、にんじんなどの緑黄色野菜、卵、チーズなど
・ビタミンC いちご、アセロラ、柿、キウイなどの果物、パプリカ、ゴーヤーなど
・ビタミンE アーモンド、落花生などのナッツ類、ウナギ、タラコなど
食事構成例を記載いたします。また合わせてメニューの一例をPDF添付いたします。
朝食のポイント
時間がない・食欲がない・普段食べる習慣がない人でも最低限のポイントを押さえて食事を取りたい大切な1日の最初の食事です。
<おすすめ一例>
・卵かけご飯
・味噌汁
・納豆
・果物
・牛乳など
昼食のポイント
一日で一番暑い時間帯が多いですが、食べやすいもで工夫した組み合わせでバランスの良い食事になります。
<おすすめ一例>
・冷やし とろろ うどん(梅干しなどを加えてもOK)
・冷しゃぶサラダ
・果物(果物ジュースで最低限の栄養摂取の代用も検討)
・牛乳など
夕食のポイント
バランスの良い食事のベースは変えずに暑い季節でも食べやすい食材や調理方法を活用しましょう。
<おすすめ一例>
・ご飯(白米、玄米、雑穀米など)
・鶏肉の照り焼き
・彩野菜の煮付け(冷やしても美味しい)
・汁物
・納豆
・ヨーグルト
・果物
補食のポイント
味付けの濃いもので塩分を摂り、身体を冷やせる糖質源とタンパク質(乳製品)も合わせて摂ることを意識しましょう
<おすすめ一例>
・濃い味付けのおにぎり
・サンドイッチ
・わらび餅など冷たい和菓子
・アイスクリーム
・フルーツバー
・フルーツポンチ(白玉入り)
・冷凍果物
・スムージー
・フラッペ
暑い時期には、就寝前から身体の熱が抜けず、入眠がスムーズに行かなかったり、睡眠中に暑さから目が覚めてしまったり(中途覚醒)、汗がうまく発汗されず脱水症状や冷房の調整が難しく身体が冷えすぎてしまったりと悩みも多いと思います。
睡眠の質を下げず快適な睡眠をとっていただき、身体の疲労を回復されながら、スポーツや日常生活を健康的に過ごせるように快眠ポイントを押さえましょう。
快適な睡眠とは
①入眠直後に最も深い睡眠に入る
②深い睡眠が比較的長く持続する
③睡眠開始から3〜4時間後、深部体温が最も低くなる
④睡眠が長い時間途切れない(中途覚醒が少ない)
⑤起床に向けて少しずつ深部体温が上昇する
上記の過程を通した睡眠となります
暑い時期の快適な睡眠を作るポイント
快適な睡眠環境には室温 夏25〜28度、冬15〜18度、湿度40〜60%と言われています。
同じ温度であっても湿度が高い汗が蒸発しにくく、体温をうまく下げることができず眠りの妨げとなります。
そこで睡眠の過程のおけるタイミングを大きく3つに分けてポイントを確認しましょう
就寝準備
・室温→快適な室温になるように就寝の約2時間前から寝室の冷房をONにする
・入浴温度→暑熱による身体の熱を逃すため湯船の設定温度を 38〜39度と少しぬるめにしましょう
・寝具→敷き寝具は柔らかすぎず、寝返りしやすいもの掛け寝具は軽く、放湿性の良いもので外に熱や湿気を逃しやすいものにします
・服装→ゆったりサイズで袖口が広く熱を逃しやすいもの
・その他→冷却グッズ(氷枕やアイスパックなど)を利用してスムーズな入眠から深い睡眠が長く持続できるように工夫しましょう。ただし、直接の皮膚への冷却は身体を冷やしずぎるため、タオルなどを利用して体温感覚を調整します
入眠〜深い睡眠(睡眠時の最低体温まで)
・入眠直後の発汗による熱放出を促進する(汗をしっかりと乾かせる環境を作る)ため就寝準備が大切です
・睡眠中は体温を冷やしすぎず体感温度だけ下げることに気をつけ、冷房または除湿運転のタイマー設定を利用する
・冷房が直接当たる場合や冷房が苦手な場合は窓を開け風の通り道を作る
・扇風機やサーキュレーターを併用して気流をよくする
・冷房OFFタイマー設定→最低体温まで緩やかに体温を下げる。設定時間は、睡眠時間の半分程度が目安です
緩やかな体温上昇
・暑すぎて睡眠が途切れないよう冷房ONタイマー設定する
・冷房ONタイマー設定→起用時刻に向けて睡眠環境を整える
・冷房温度設定だけでなく、窓を開け風通しを良したり、扇風機やサーキュレーターを併用して室内の気流を作る
・環境省「熱中症予防情報サイト」
・日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
・国立スポーツ科学センター「競技者のための暑熱対策ガイドブック」
・ナツメ社 著者:清野準・塚本咲翔 「パフォーマンスを高めるためのアスリートの栄養学」
・ダイキン「熱帯夜の困りごと解決法」